AMSER開発者林貴晴氏が教える|第16話:ニュースの影響と対策

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為替市場では、ニュース発表時に相場が大きく変動することがあります。

これは自動売買システム(EA)の運用に大きな影響を与える可能性があるため、適切な対策が必要です。

 

ニュースには主に2種類あります。

一つは予定されている指標発表で、もう一つは予測が困難な突発的なニュースです。

予定されている指標発表には、金利発表、GDP、雇用統計、インフレ率、貿易収支などがあります。

これらは事前にスケジュールが公表されるため、トレーダーはリスク管理を行うことができます。

 

一方、突発的なニュースには戦争の勃発や政府の緊急介入などがあります。

これらは予測不可能であり、自動売買システムでは適切に対応することが難しい場合があります。

このような状況を踏まえ、一部の開発者や情報発信者は、予定されているニュース発表時にEAを一時停止することを推奨しています。

しかし、この方法が常に最適とは限りません。EAのロジックによっては、ニュース発表時こそチャンスとなる場合もあるからです。

EAのロジックとニュース時の対応

EAには様々なロジックがあり、それぞれに特徴があります。

ここでは、代表的な4つのタイプについて、ニュース発表が与える影響と効果的な対策を解説します。

トレンドフォロー型

トレンドフォロー型EAは、相場の大きな動きに追随して利益を得ることを目的としています。

このタイプのEAは一般的に、低勝率ですが、損小利大の特徴があります。つまり、負けた時の損失に比べて、勝った時の利益が大きくなる傾向があります。

 

ニュース発表の際には相場が大きく動くことが多いため、トレンドフォロー型EAにとっては好機となります。

ポジションの方向とニュース発表で動く方向が同じ場合には大きな利益を期待でき、逆行した場合でも損失は限定される傾向があります。

 

トレンドフォロー型EAを使用している場合、ニュース発表時に停止するよりも、むしろ運用を継続することで期待値をあげることができます。

ただし、急激な相場の変動に備えて、適切なリスク管理を行うことは忘れないようにしましょう。

レンジ型

レンジ型EAは、相場が一定の範囲内(レンジ)で推移する際に有効な自動売買の一種です。

このタイプのEAは、価格が過度に上昇(買われすぎ)または下落(売られすぎ)したと判断したタイミングで逆張りエントリーを行い、価格がレンジ内に戻ることを期待して利益を得ようとします。

 

通常、レンジ型EAは高勝率ですが、利益幅が小さい一方で、損失が大きくなるリスクがあります。

特に注意が必要なのは、ニュース発表などで価格が大きく動く時です。

レンジ型EAは相場がレンジ内で動くことを前提としているため、強いトレンドが発生した際には、売られすぎや買われすぎと判断してエントリーしても、トレンドが継続することで逆行し、ポジションが大きく損失を抱える可能性があります。

さらに、トレンド相場が継続してしまうと、逆張りエントリーを繰り返すたびに損失が積み重なり、大きな打撃を受けるリスクが高まります。

そのため、レンジ型EAを使用する際は、ニュース発表のスケジュールを事前に確認し、重要な経済指標の発表時にはEAを一時停止するなど、適切にリスクを管理することが重要です。

また、過去のバックテスト結果を分析し、ニュース発表時のEAの挙動を把握しておくことも有効な対策となります。

グリッドトレード

グリッドトレードは、一定間隔で注文を出す戦略です。

このタイプのEAにとって、ニュース発表時の大きな価格変動は利益を得られるチャンスとなります。

価格が大きく動くことで、複数の注文が同時に約定し、短時間で大きな利益を上げる可能性があるからです。

 

しかし、同時に注意すべき点もあります。

価格が一方向に大きく動いた場合、逆方向のポジションが大きな含み損を生み出す可能性があります。

このため、含み損が大きくなり過ぎて破綻しないように適切な資金管理を行う必要があります。

資金管理ができていれば、価格の大きな変動はグリッドトレードにとって大きな収益の機会になります。

ナンピン型

ナンピン型EAは、ポジションを追加して平均取得価格を下げることで利益を狙う戦略です。

しかし、ニュース発表時に急激な価格変動が起こると、ポジションが一気に増え、大きな損失を抱える危険があります。

 

例えば、買いポジションを持っている状態で価格が急落した場合、ナンピン型EAは価格の下落に合わせて次々と買いポジションを追加します。

しかし、相場が反転せずに下落が続くと、ポジションサイズが急激に大きくなり、損失が雪だるま式に膨らむ可能性があります。

 

一方で、利益確定方向に動く場合、その利益は限定的になりがちです。

これは、価格が上昇するにつれて既存のポジションは利確しますが、新たなポジションは追加されないため、損失に比べて利益が少なくなることが多くあります。

 

このため、ナンピン型EAはニュース発表時など大きくトレンドが出る時には使用を慎重に検討する必要があります。

対策としては、ニュース発表時はEAを一時停止することが考えられます。

また、ニュース発表前後は新規ポジションの追加を制限することも有効です。

さらに、急激な価格変動時は自動的にポジションを縮小する機能を実装することや、全体のポジションサイズに上限を設けることも検討すべきでしょう。

ニュースに合わせた対策

基本的な対策として、ニュース発表時にEAを停止する必要のあるロジックは、自動で停止する機能を実装することが推奨されます。

手動での対応よりも迅速かつ確実にリスクを回避できるからです。

 

開発者や販売者がニュース発表時に停止を推奨するEAを使用する場合は、この機能の有無を確認し、使用の是非を検討しましょう。

多くの場合、EAは内部ロジックがブラックボックスであるため、指標発表時に停止すべきかどうかの判断は利用者にとって悩ましい問題です。

この判断を助けるのがバックテストの結果です。バックテストでは、指標発表時に停止せずに運用した場合の結果を確認することができます。

過去のデータを分析することで、ニュース発表時のEAの挙動やパフォーマンスを把握し、適切な対策を立てることができます。

 

また、可能な限りEAのロジックを理解し、ニュース発表時にどう対処すべきかを事前に考えることが重要です。

ロジックが明確であれば、発表時に運用を続けるべきか、停止すべきかの判断がしやすくなります。

 

例えば、トレンドフォロー型のEAであれば、ニュース発表時こそチャンスかもしれません。

一方、レンジ型のEAであれば、大きな相場変動時には停止を検討する必要があるかもしれません。

 

さらに、リスク管理の観点から、いくつかの対策が効果的です。

ニュース発表前後は取引量を減らすなど、ポジションサイズの調整を行うことが重要です。

また、急激な相場変動に備えてストップロスを設定し、損失を限定することも大切です。

 

EAの運用においてニュース発表への対応は非常に重要です。

EAのタイプやロジックを理解し、適切なリスク管理を行うことで、ニュース発表時のリスクを最小限に抑えつつ、潜在的な利益機会を逃さないようにすることが可能です。

継続的なモニタリングと調整を行いながら、自身のトレードスタイルに合った最適な運用方法を見つけていくことが、長期的な成功につながるでしょう。

執筆者紹介

AMSER株式会社 代表取締役

林 貴晴

S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務
S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務

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