経済指標を狙ったFXイベントトレードの手法2選と主な指標4選

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トレードを行ううえで、経済指標を避けることはできません。

経済指標の結果次第ではレートが大きく動くため、知らないと大きな損失を抱えてしまうリスクがあります。

 

今回は、経済指標についての基本的な知識、有名な指標、指標発表を狙ったトレード例について解説していきます。

FXと経済指標イベントの関係

重要な経済指標の発表時には、相場が大きく動くことがあります。

それをイベントと捉えるFX投資家は多いわけですが、どんな経済指標に注目するべきで、こうしたイベントを利益につなげるにはどうするべきなのでしょうか。

 

最初に、経済指標とFXの関係について、基本から解説します。

FXでよくいわれる経済指標ってなに?

トレーダーであれば、経済指標という言葉を頻繁に見聞きすると思います。経済指標とは、世界の各国が発表する経済に関連する数値のことです。

 

経済指標はその国の経済や景気の動向を示しているため、発表された経済指標の結果によっては相場が大きく動くことがあります。

 

また、経済指標の結果によってそれまでのトレンドが転換することもあるため、重要な経済指標はFXに限らず多くの投資家が注目しています。

経済指標分析の基本は雇用、物価、景気、金利

経済指標を読み解くポイントは、以下の4つです。

  • 雇用
  • 物価
  • 景気
  • 金利

投資家が注目している経済指標のほとんどがこれらに関するもので、以下のような相関関係があります。

 

経済指標のポイント相場で起きやすい反応、傾向
雇用雇用者数が増えて失業率が下がれば買われやすく、逆なら売られやすい
物価物価高を示す結果になるとインフレ抑制の金利上昇の思惑が広がり買われやすく、逆なら売られやすい
景気景気拡大が示唆されれば買われやすく、逆なら売られやすい
金利金利が上昇するとその通貨は買われやすく、下落すると売られやすい

これらのポイントはそれぞれ独立したものではなく、リンクし合っています。

 

例えば、景気が拡大している局面では雇用が増えますし、物価も上昇しやすくなります。

物価が上昇するとインフレ抑制のために金利が上昇する可能性も高く、いずれもその通貨にとっては買い材料です。

 

経済指標イベントをFXトレードに役立てる際には、この相関関係を押さえておきましょう。

常に注目される指標と流行りの指標

経済指標を大きく分けると、長らく注目され続けてきているものと、「旬」となっているものがあります。

アメリカの雇用統計など長らく注目され続けている経済指標がある一方で、一種のブームのように注目される経済指標もあります。

 

直近では、アメリカの金利と消費者物価指数が挙げられます。コロナ禍では主要国が通貨供給量を大幅に増やしたため、コロナ禍収束後はインフレの傾向が強まりました。

 

アメリカではインフレ抑制のために相次いで金利引き上げを行いましたが、それでも物価は上昇し続けました。

その結果、投資家はアメリカの消費者物価指数への注目度を高め、毎月の発表時は一大イベントのような様相を呈しました。

 

その後、アメリカのインフレは収束の兆しが見えてきたため、インフレ関連の経済指標に対する注目度は徐々に低くなっていきました。

 

こうした「流行りネタ」の経済指標は特に相場が大きく動きやすいため、トレードのチャンスが広がります。

指標発表時の値動き

重要な経済指標の発表時に相場はどの程度反応するのか、実際の例をもとに解説しましょう。

 

こちらは、2025年6月のドル円1時間チャートです。このチャートには2か所、短時間のうちに大きく相場が動いている局面があるので、そこに丸印を入れました。

 

 

左側の丸印部分は、6月4日23時のアメリカの「ISM非製造業景況指数」発表時です。

前回よりも少し上昇の予想でしたが、結果は予想に反して悪化。これによってアメリカの景気減速が意識され、ドル円は60pips程度下落しています。

 

右側の丸印部分は、6月6日21時30分に発表されたアメリカの「非農業部門雇用者数(いわゆる米国雇用統計)」です。こちらは予想に反して雇用者数が増えており、アメリカ景気の底堅さが意識され、ドル円は上昇しました。

 

どちらも短時間に60pips程度の値動きが起きているため、この動きにうまく乗ることができれば利益のチャンスになります。

重要な経済指標をチェックする方法

トレードチャンスにつながるような経済指標に関する情報は、簡単に入手できます。

口座を持っていなくても公式サイトで経済指標カレンダーを見られる証券会社もあり、FXに役立つ経済指標の情報はネット上で簡単にチェックすることができます。

 

また、世界標準のFX取引プラットフォームとして有名なMT4(Meta Trader 4)には実に多くのインジケーターが流通しており、その中には経済指標に関するものがあります。

 

例えば、FXTFが口座開設者に無料配布している「FXTF_Calendar」をMT4にインストールすると、MT4の画面上に直近の経済指標カレンダーが表示されます。

 

FX界のイベントといわれる主な経済指標4選

世界各国からは実に多くの経済指標が発表されていますが、その中でも特にFXトレードと関わりの深い経済指標を4つ紹介します。

 

これらはFX界のイベントとも目されているもので、知っておくとトレードチャンスが広がるでしょう。

 

なお、経済指標名の後ろにあるカッコ内はそれぞれの経済指標の発表国および注目するべき国です。

雇用統計(アメリカ)

FX界で知名度・注目度ともにトップクラスといえるのが、アメリカの雇用統計です。基本的に毎月第1金曜日に発表 されます。雇用者数が増えるとアメリカの景気拡大、減ると景気減速が意識され、米ドル/円やユーロ/米ドルなどのドルストレートが大きく動くことがあります。

 

また、本家・雇用統計が発表される2日前には民間の給与計算代行会社が発表するADP雇用統計が発表 されます。ADP雇用統計は本家・雇用統計の内容を占う前哨戦ともいわれており、発表された結果によっては相場を大きく動かす要因になります。

 

ただし、ADP雇用統計については「当たらない」との評価もあるため、あまり意識していない投資家も多くいます。

消費者物価指数(アメリカ)

消費者物価指数は、その国の物価動向を示す経済指標です。「Consumer Price Index」という英語表記を略してCPIと呼ばれることもあります。

 

物価が上昇するとインフレが警戒され、それを抑えるために中央銀行が政策金利を引き上げる可能性が高くなります。

アメリカではコロナ禍が収束した2022年から大きく物価が上昇しており、金利を引き上げることでインフレ抑制を進めてきました。

 

そのため、アメリカの消費者物価指数が発表されて物価が依然として高いことが分かると、米ドルが大きく買われるといった局面もありました。

 

2025年に就任したトランプ大統領は一貫して米ドル安に誘導するために利下げを主張しており、その圧力もあってアメリカの消費者物価指数が低下すると利下げが意識され、米ドルが売られやすくなっています。

政策金利(アメリカ、日本、EUなど)

景気動向などを考慮して、各国の金融当局は政策金利を決定します。

金利が高いとその通貨を持っているだけで金利収入が期待できるため買われやすくなり、逆に金利が低いと金利収入が低下するため売られやすくなります。

 

2つの通貨間で金利差が広がると、金利が高いほうの通貨は買われやすくなり、もう一方の金利が低い通貨は売られやすくなります。

 

例えば、米ドル/円が歴史的な円安になったのは、日米両国の金利差も関係しているといわれています。

 

アメリカの場合は政策金利の発表に加えてFOMC(連邦公開市場委員会=政策金利を決定する会議)の声明、日本の場合は政策金利発表に加えて金融政策決定会合の声明や植田日銀総裁のコメントなどが材料視されることがあります。

GDP(アメリカ、EU、イギリスなど)

GDPはその国の経済規模を示す指標です。

直近の四半期GDPが発表され、前回発表時よりも大きくなっていれば景気が上向きと見なされ、対象国の通貨は買われやすくなります。そして、逆であれば売られやすくなります。

 

アメリカやEU、イギリスなど主要国のGDPは注目されやすく、トレードで意識するべき経済指標といえるでしょう。

経済指標を狙ったFXのイベントトレード2選

経済指標発表という「イベント」をFXのトレードチャンスにいかす方法として、ここでは2つの手法を紹介したいと思います。

いずれも比較的初心者向きの手法なので、チャレンジしてみたい方は少額取引やデモトレードで試してみてください。

 

これ以外にもさまざまな手法がありますが、重要な経済指標ほど発表時にはスプレッドが拡大し、スリッページも発生しやすいため、経済指標発表直後の手法は除外しました。

指標発表数日前の「織り込み」に順張り

重要な経済指標を控えている時は、数日前から様子見ムードになることがあります。

様子見ムードになると相場の動きは少なくなるのですが、そのタイミングで相場が一方向に動くようなことがあれば、それは経済指標の結果を織り込み始めている可能性があります。

 

大口投資家や投機筋といった市場での影響力が大きな勢力がポジションを構築している可能性があり、その動きに乗って順張りをしていくのは1つの有効な手法です。

指標発表直後の「戻り」を逆張り

経済指標が発表された直後はスプレッドが拡大することが多いですが、時間の経過とともに元のスプレッドに戻ってきます。

 

スプレッドが落ち着き始めた頃に、経済指標発表時とは逆の動きで相場が戻るケースがあります。

いわゆる「行って来い」の展開で、この動きを利用すると相場が戻り始めたことを確認した上で逆方向へのエントリーチャンスとなります。

 

こちらは、2025年6月5日にアメリカの貿易収支や新規失業保険申請件数などが発表されたタイミングの米ドル/円における5分チャートです。

 

 

①の矢印部分で急落しているものの、その直後に「全戻し」をした上でさらに上昇しているのが見て取れます。

経済指標発表時に大きく動いたあとの戻りを狙うのであれば、戻し始めたことを確認した②の矢印付近から買いでのエントリーが有効ということになります。

 

ただし、こうした動きが毎回起きるわけではありません。

相場が戻る場合であっても「全戻し」ではなく「半値戻し」程度までということもあるため、経済指標発表直後の戻りを狙う場合は、値動きの全部を取ろうとしないほうが無難です。

経済指標を狙ったイベントトレードの注意点

経済指標を狙ったイベントトレードをする場合に、注意しておきたいことを3つの項目で解説します。

重要な経済指標を狙うほどリスクも大きくなることを踏まえつつ、注意点を押さえておきましょう。

予測が外れると大きな損失につながるリスクがある

経済指標の発表時を狙うということは、「大きな値動きを狙う」ということでもあります。

結果を予想してポジションを保有したものの、予想とは逆の結果になったら損失も大きくなります。

 

状況によっては経済指標の結果によってトレンドが転換することもあります。

トレンド転換によって含み損が拡大し続ける事態だけは避けるべきなので、経済指標を狙うトレードでは損切りを徹底しましょう。

 

直近の高値もしくは安値など、「ここを超えたら損切り」というラインをあらかじめ決めておいて、思惑が外れたら冷静かつ確実に損切りをすることが重要です。

重要指標の発表直後はスプレッドが拡大しやすい

先ほど少し述べましたが、重要な経済指標の発表時にはFX口座のスプレッドが拡大しやすくなります。

 

通常時と比べると10倍以上にスプレッドが拡大することもあるため、読み通りのトレードになったとしてもスプレッドが広すぎて負けてしまうことがあります。

重要指標の発表直後はスリッページも発生しやすい

上記と同じく、重要な経済指標の発表直後はスリッページも発生しやすくなります。

スプレッドの拡大に加えてスリッページによって思い通りのトレードができず、そのせいで負ける恐れがあります。

 

重要な経済指標ほど通常時とは異なる取引環境になることを、しっかりと留意しておくことが大切です。

執筆者紹介

FX情報誌『外国為替』編集長

鹿内 武蔵

FX情報誌『外国為替』編集長 投資専門ライター&編集者集団、株式会社tcl代表取締役
FX情報誌『外国為替』編集長 投資専門ライター&編集者集団、株式会社tcl代表取締役

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