AMSER開発者林貴晴氏が教える|第17話:VPSの効果的な利用方法

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VPS(仮想専用サーバー)を利用してMT4(Meta Trader 4)やMT5(Meta Trader 5)を運用する際、効率的なメモリー管理はパフォーマンスの向上とコスト削減のために欠かせません。

本記事では、VPSのメモリーを最適化するための具体的な方法を紹介します。

VPSの効果的な選び方

 

VPSのスペックで最も重要な要素はメモリー容量です。

これは、MT4やMT5などの取引プラットフォームが大量の過去データを高速に処理する必要があるためです。

十分なメモリーがあれば、これらのプロセスをスムーズに処理でき、システムの安定性と反応速度が向上します。

 

CPUの性能やSSDの容量も気になるところですが、MT4やMT5を安定して運用するうえで、これらは大きな問題にはなりません。

CPUは計算速度に影響しますが、通常の取引やEAの実行には最近のVPSのCPUで十分対応できます。

 

VPSを選ぶ際は、まずメモリー容量を重視し、その上でCPUやストレージを考慮するのが効果的です。

MT4の場合

MT4は32ビットで設計されているため、64ビット版のWindowsでも最大4GBまでしかメモリーを使用できません。

MT4に大量のチャートを開いて複数のEAを運用する場合、各MT4がメモリーの最大容量を超えないようにする必要があります。

最大容量を超えた場合、システムはSSDやHDDのストレージに書き込みや読み込みを頻繁に行い、パフォーマンスが低下し取引に影響が出ることがあります。

MT5の場合

MT5は64ビット対応のため、理論的には最大2TBまでメモリーを使用できます。

MT4はメモリーに1分ごとのBidのOHLCVデータ(価格の始値、高値、安値、終値、ティックボリューム)を読み込みます。

一方、MT5はティック単位でBidとAskの両方の価格データが保存されています。

そのため、 MT5の方が使用するデータ量が多くメモリーの使用量が増えそうですが、必要なデータのみを読み込んで圧縮管理するため、MT4に比べてメモリー使用量は少なくなります。

メモリーの使用量を節約

 

ポイント1

メモリーの使用量を把握するためには、タスクマネージャーを活用します。

ポイント2

VPS上でCtrl+Shift+Escを同時に押すことでタスクマネージャーが起動し、「プロセス」タブからMT4やMT5がどれくらいのメモリーを使用しているか確認できます。

チャートを立ち上げずにMT4を起動した場合、メモリー使用量は50MB程度になります。

しかし、過去のデータを大量にインストールしている、例えば2005年以降のデータを持つ1分足のチャートを開くと、メモリー使用量は800MB程度に増加します。

 

また、同じ通貨ペアで同じ時間足のチャートを追加で開いてもメモリー使用量には大きな変化はありませんが、異なる通貨ペアや異なる時間足のチャートを開くとメモリー使用量が大きく増えます。

これは、チャートに表示されている過去データがメモリーを消費するためです。

時間足によってもメモリーの消費量は異なり、5分足のデータは1分足の約5分の1、15分足のデータは1分足の約15分の1程度のメモリーを使用します。

 

1つのVPS上に複数のMT4やMT5を立ち上げる場合は、同じ通貨ペア同じ時間足のチャートは1つのMT4やMT5にまとめることでメモリーを節約できます。

 

MT4のメモリー使用量を節約するために、過去データの量を制限することができます。

チャートを見ながらの分析やバックテストを行う際には十分な過去データが必要ですが、運用するためだけのMT4には最低限のデータがあれば十分です。

 

過去データの量を制限するには、MT4の設定で「ヒストリー内の最大バー数」および「チャートの最大バー数」を調整します。

MT4の「ツール」メニューから「オプション」を選び、「チャート」タブでこれらの数値を設定します。

「ヒストリー内の最大バー数」及び「チャートの最大バー数」を10,000程度に減らすと、メモリーの使用量を大幅に減らすことができます。

この設定により、バックテストやEAが参照するデータの量が制限され、メモリーの負荷が軽減されます。

 

「ヒストリー内の最大バー数」が10,000の場合、MT4は過去10,000本分のローソク足データを保存し、それ以上は削除します。

過去10年の1分足のバー数は2億本以上になりますので、設定を10,000に減らすとメモリーの使用量はおよそ1/20,000にまで大幅に減らすことができます。

 

一方、「チャートの最大バー数」は、現在表示されているチャートにどれだけのデータを表示するかを制限する設定です。

一般的な1,920x1,080のモニターで表示できるバー数はおよそ1,800本程度です。

この範囲内であれば十分に視認できるため、表示するデータの量を減らすことが可能です。

表示する際の不足分は「ヒストリー内の最大バー数」を読み込むために、「ヒストリー内の最大バー数」と同じにすることが合理的です。

 

MT5でもメモリーをさらに節約するための設定が可能です。「ツール」メニューから「オプション」を選び、「チャート」タブでチャートの最大バー数を調整することでメモリーの使用量を制限できます。

デフォルトではUnlimited(無制限)に設定されていますが、プルダウンメニューで選択するか、数値を直接入力することも可能です。

 

過去データの量の管理と、同じ通貨ペア、同じ時間足のチャートを1つのMT4やMT5にまとめることでVPSのメモリー使用量を大きく減らすことができます。

また、1つのMT4が4GBを超えるメモリーを使用していないかタスクマネージャーで確認し、4GB近くを使用している時は別のMT4を立ち上げて分散することが有効です。

これらの方法で、1つのVPSでより多くのEAを運用でき、VPSのコストパフォーマンスを最大化できます。

 

執筆者紹介

AMSER株式会社 代表取締役

林 貴晴

S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務
S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務

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