AMSER開発者林貴晴氏が教える|第14話:利益を最大化するコスト管理
公開日:
FX取引ではさまざまな手数料が発生し、それらを適切に管理することで、取引コストを抑え、利益を最大化することができます。
ここでは、代表的な手数料の種類とその特徴、さらに取引を有利に進めるためのポイントを解説します。
スプレッド
スプレッドとは、通貨ペアの買値と売値の差額であり、実質的な取引コストとなります。スプレッドには「原則固定」と「変動」がありますが、原則固定のスプレッドであっても、ニューヨーク市場のクローズ前後や重要な経済指標発表時には大きく変動することがあるため、注意が必要です。
また、同じ通貨ペアでもFX業者によってスプレッドが異なることがあります。
業者ごとにスプレッドの広さが数倍から数十倍に及ぶことがあるため、複数の業者を比較し、できるだけスプレッドが狭い業者を選ぶことが重要です。
特に、頻繁に取引を行う場合や、1回の取引で得られる利益(期待利得)が小さいEA(Expert Advisor・自動売買プログラム)を利用する場合、スプレッドの違いが最終的なパフォーマンスに大きな影響を与えるため、コスト管理が不可欠です。
例えばドル円のスプレッドが0.2Pipsの業者と、2Pipsの業者があります。
1ロット(100,000通貨)を一回取引した場合前者は200円、後者は2,000円を支払うことになります。
1年間(260日)毎日1回の取引をした場合、前者の手数料は52,000円、後者は520,000円になります。これだけで支払う手数料が年間468,000円、Pips換算で468Pipsもの差が出ます。
スワップポイント
スワップポイントとは、取引する通貨ペアの金利差によって発生するコストや利益です。
毎日、保有ポジションに応じてスワップポイントが発生します。
スワップポイントは業者によって異なり、受け取りと支払いが同じ「一本値」の業者もあれば、受け取る金額よりも支払う金額が多く設定されている業者もあります。
一部の業者では、受け取るスワップよりも支払うスワップが数十倍にもなることがあるため、長期保有を前提としたトレードでは、スワップ条件を慎重に確認することが重要です。
また、ニューヨーク市場の水曜日のクローズ時には3日分のスワップが発生するため、不要な支払側のポジションを持たないようにすることで、余分なコストを抑えられます。
取引手数料
スプレッドとは別に、取引ごとに手数料が発生する業者もあります。
近年では、手数料を設定しない業者が増えてきましたが、一部の業者では依然として取引手数料がかかる場合があります。
取引手数料はスプレッドと同様に、取引回数が多いEAや期待利得が小さいEAを運用する際に、大きな負担となる可能性があるため、これらのEAを使用する際には取引手数料の有無を確認することが推奨されます。
スリッページ
スリッページとは、注文を出した価格と実際に取引が成立した価格の差です。
市場が急激に動いている際に発生しやすく、特に利益確定時には有利な方向にずれる(ポジティブスリッページ)、損切り時には不利な方向にずれる(ネガティブスリッページ)が発生する傾向があります。
しかし、市場の状況によっては逆のケースも十分にあり得ます。
例えば、利益確定時に市場が急激に反転してネガティブスリッページが起きたり、損切り時に市場が一時的に戻ってポジティブスリッページが発生したりすることもあります。
一部の業者ではネガティブスリッページしか発生しない場合もあり、このような業者を避けることが賢明です。
MT4にはスリッページを設定する機能がありますが、実際には業者側で無視されることが多いため、スリッページが大きく発生しない業者を選ぶことが重要です。
スリッページには様々な原因があります。
経済指標の発表時には多くのトレーダーが同時に注文を出し、価格が急激に動くためスリッページが発生しやすくなります。
また、ニューヨーク市場のクローズ時は、逆に注文が減少するため、流動性が低下し、価格の動きが不安定になることがあり、スリッページが発生しやすい状況となります。
このような状況には少ない板を取り合うことになるために、より速い注文が有利になります。
そのために、VPS(仮想専用サーバー)の利用が効果的です。
VPSを使うことで、注文処理の遅延を減らし、取引の迅速な実行が可能になります。
特に、市販されている複数の人間が使用するEAを運用している場合、注文が集中するためにVPSを利用することで、インターネット通信による時間のロスを減らし、スリッページのリスクを減らすことが期待できます。
ロスカット手数料
ロスカット手数料は、証拠金が不足し強制的にポジションが決済される際に発生する手数料です。
資金管理を徹底していればこの手数料が発生することはありませんが、複数ポジションを持つEA、特にナンピン(損失が出た際に同じ方向に追加でポジションを持つ戦略)を繰り返すEAを利用している場合は、証拠金不足によるロスカットが発生するリスクが高まるため、注意が必要です。
初心者トレーダーにとっては、ポジション数が限定されたシンプルなEAを使用することで、資金管理の負担を軽減することができ、リスクを最小限に抑えることが可能です。
入金・出金手数料
FX業者によっては、入金時や出金時に銀行振込手数料がかかる場合があります。
しかし、近年では振込手数料が安くなりつつあり、また、ダイレクト入金を利用することで、これらの手数料を回避することができる業者も増えています。
不要なコストを避け、賢く資金を管理するために、入出金手数料のかからない業者を選ぶことが推奨されます。
口座維持手数料
毎月発生する口座維持手数料がかかる業者も存在しますが、一般的なFX業者ではあまり見かけなくなりました。
月間取引量が低いトレーダーや、長期間取引を行わない場合は、口座維持手数料が発生する業者の利用を避ける方が良いでしょう。
近年、FX業者間での低スプレッド競争が過熱しています。
しかし、スプレッドを減らした分の利益を確保するため、スワップの受け取りと支払いの差を拡大するなど、他の面でコストを転嫁する傾向があります。
そのため、FX取引では総合的な手数料の管理が利益に直結します。
スプレッド、スワップ、スリッページなど、さまざまな手数料に注意を払い、自分の取引スタイルに最も適した業者を選ぶことで、取引コストを抑えながら利益を最大化することができます。
また、取引手数料の有無、スリッページの発生状況、スワップポイントの変更などを定期的に確認し、必要に応じて業者の見直しを行うことも、長期的に安定した取引成果を得るために重要です。
執筆者紹介

AMSER株式会社 代表取締役
注意・免責事項
- ・記載の内容は個人の見解に基づくものであり、実際の投資にあたっては、お客様ご自身の責任と判断においてお願いいたします。
- ・本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。
- ・また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。
- ・なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
- ・各レポートに記載の内容は、GMOインターネット株式会社の事前の同意なく、全体または一部を複製、配布を行わないようお願いいたします。