AMSER開発者林貴晴氏が教える|第20話:EAの資金管理とポジションサイズ

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外国為替証拠金取引(FX)では、レバレッジを利用して少ない資金で大きな取引が可能です。

ただし、レバレッジの高さにより、資金管理を怠ると相場の急変で証拠金が不足し、強制決済されるリスクがあります。

 

この記事では、EA(自動売買プログラム)における資金管理とポジションサイズの重要性を解説します。

資金管理について

実質証拠金計算

まず、最大の損失が発生した場合でも証拠金が不足しない「実質証拠金」を計算する方法を紹介します。

この実質証拠金とは、取引に必要な「必要証拠金」と、バックテスト結果から得られる「最大ドローダウン」の合計額です。

 

実質証拠金 = 必要証拠金 + 最大ドローダウン

必要証拠金の計算

必要証拠金は、レバレッジが大きくなると減少します。

一方、ポジション数が増えた場合比例して大きくなります。

 

必要証拠金 = 100,000通貨(1LOT) × 通貨レート × 最大ポジション数 ÷ レバレッジ

最大ドローダウンの計算

最大ドローダウンは、資金のピーク時からの減少額を示し、バックテストの結果から求めることができます。

必要証拠金と合わせるために1ロットに換算した値を計算してください。

最大ドローダウンの信頼性

最大ドローダウンはしばしば過剰最適化され、実際のリスクを十分に反映していないことがあります。

特に、取引数が少ないバックテストや、非常に大きなストップロス(SL)を設定したEAは注意が必要です。

信頼性の高いドローダウンを得るために、最大敗けトレードと最大連敗数から計算した「最大ドローダウン近似値」を活用する方法があります。

 

最大ドローダウン近似値 = 最大敗けトレード × 最大連敗数

 

さらに、バックテストの最大連敗数は取引数が少ないとばらつきが発生しますので、勝率に基づいて計算した最大連敗数(理論値)を紹介します。

こちらの値を使用することで最大ドローダウン近似値がより安定します。

これによって計算した「最大ドローダウン近似値」とバックテスト結果の「最大ドローダウン」の大きい値を使用することで過剰最適化によるリスクを避けながら、より現実的なドローダウンの計算が可能となります。

 

 

勝率(%)最大連敗数(理論値)
10%88
20%42
30%26
40%18
50%13
60%10
70%8
80%6
90%4

複数EA運用時のポジションサイズ管理

複数のEAを同時に運用する場合、それぞれの成績やリスクプロファイルは異なります。

そのため、各EAに適したポジションサイズを設定し、リスクとリターンのバランスを取ることが重要です。

適切なロット配分を行う方法を紹介します。

最大ドローダウンベースのロット配分

EAごとに異なる最大ドローダウンを考慮してロットサイズを設定する方法です。

ロットを調整しそれぞれのEAの最大ドローダウンを近い値にそろえることで、相対的にリスクが少ないEAには大きなロットを配分し、全体のリスクを均等にします。

資本均等配分法

各EAに均等な資本を割り当て、リスクを平等に配分する方法です。

たとえば、口座残高が100万円で5つのEAを運用する場合、各EAの実質証拠金が20万円になるようにロットを設定します。

シンプルで管理しやすく各EAのパフォーマンス評価がしやすい特徴があります。

複利運用時

複利運用では、利益が出るにつれてロットサイズも大きくなりますが、EAごとの成績にばらつきが生じることがあるため、リバランスを行うことが推奨されます。

これにより、特定のEAが過剰なリスクを取ることを防ぐことができます。

リバランス

ポートフォリオ内でのEAのロット比率が変動した際に、はじめの計画通りの比率に戻す調整作業のことです。

たとえば、複数のEAを運用している場合、あるEAが利益を上げると、そのEAのロット比率は全体のロットに占める割合が大きくなります。

リバランスでは、その利益を他のEAや資産に分配し、ポートフォリオ全体のバランスを再構築します。

定期的なリバランスの重要性

EA運用においては、月に1回または3ヶ月に1回など、定期的にパフォーマンスを見直し、ロット配分を再設定することが重要です。

調子の良いEAでも、過度にリスクを取らないように調整することで、長期的な資産の安定成長を目指すことができます。

資本成長に伴うリスク調整

資本の増加に伴い、全EAに対してリスクを一定に保つために、個別EAのロットサイズを再調整します。

例えば全体の利益が10%増えた時などに定期的なリバランスとは別にリバランスを行います。

調子の良いEAが引き続きリターンを出す可能性はありますが、過剰なリスクを取らないようにするのが目的です。

 

EAを運用する際には、適切な資金管理とポジションサイズの設定が成功の鍵となります。

最大ドローダウンやリスク分散に基づいたポジション配分、そして定期的なリバランスによるリスク管理を徹底することで、長期的な安定運用が可能となります。

資金の成長に伴ってリスクも増大しますが、常にリスクを一定に保つような運用方法が求められます。

執筆者紹介

AMSER株式会社 代表取締役

林 貴晴

S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務
S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務

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