AMSER開発者林貴晴氏が教える|第18話:EA選びの基礎知識

公開日:

EA選びの基礎知識

EA(エキスパートアドバイザー)の選び方は、自動売買プログラムを利用しようと考えているトレーダーにとって非常に重要なステップです。

EAはさまざまな方法で入手できますが、最適なEAを選ぶためには、いくつかの基本的なポイントを押さえることが必要です。

 

EAの多くはブラックボックスであり、ロジックが公開されていないことが一般的です。

そのため、選定の際にはバックテスト結果が重要な参考材料となります。本記事では、初心者にもわかりやすく、EAの選び方について順を追って解説します。

EAの使用目的を明確にする

EAを選ぶには、まずその使用目的をはっきりさせることが大切です。

短期的に利益を狙うのか、長期的な資産形成を目指すのかで、適したEAは異なります。

 

複数ポジションを持つEAは短期運用に向いていますが、長期間の使用には破綻のリスクが伴います。

一方、ポジションを一つだけ持つEAは安定した長期運用を重視する場合に適しています。

EAの運用を開始したばかりの時には短期的な運用を選択することが多く、経験を積むにつれ、安定したリターンを狙うリスクの低いEAを選ぶことが一般的です。

 EAの仕組み

一般的なEAは、期待値の高い取引を繰り返すことで利益を追求します。

期待値の高いロジックを探すために開発者は、仮説に基づいてインジケーターを活用し、バックテストや最適化を通じて効果的な取引手法を検証してEAに組み込こんでいます。

 

ロジックの再現性を高めるためには、より多くのデータ量で試験をすることが重要です。

1分足のデータは約20年分が公開されており、約700万本に相当します。

このような膨大なデータ量で試験を行うことで、将来に対してもある程度信頼できる結果が得られます。

期待値とは

期待値とは、1回の取引で得られる平均的な損益を指します。

取引の勝率と損益の平均を掛け合わせて計算されます。

たとえば、勝率が90%で、平均利益が1,000円、平均損失が10,000円の場合、期待値は以下のように計算されます。

90% × 1,000円 + 10% × -10,000円 = -100円

 

この場合、勝率が90%でも、1回の取引あたり平均で100円の損失が発生することになります。

逆に、勝率が30%で平均利益が5,000円、平均損失が2,000円の場合、期待値は以下の通りです。

30% × 5,000円 + 70% × -2,000円 = 100円

 

この場合、勝率30%でも期待値がプラス100円となり、繰り返すことで利益を得ることができます。

 

このように、勝率と期待値は必ずしも一致しないため、勝率が高くても期待値がマイナスになる場合や、逆に勝率が低くても期待値がプラスになる場合があります。

前者はナンピンやマーチンゲール型のEAに多く見られ、小さな利益を積み重ねる一方で、大きな損失が発生するリスクも伴います。

一方で、1ポジション限定のEAでは、安定的な運用成果が得られる傾向が強いでしょう。

 

過去の運用成績をチェックする

次に、過去の運用成績を確認することも非常に重要です。EAのロジックが公開されていない場合、バックテストの結果が信頼できる指標となります。

バックテストは、EAが過去の相場でどのようにパフォーマンスを発揮したのかをシミュレーションした結果です。

 

まず、月間平均収益を計算します。異なる期間のバックテスト成績を比較する際、月間平均収益は有効な指標となります。

たとえば、1年間のバックテスト結果があれば、純益の額を12か月で割り、月間平均収益を求めることができます。

ただし、すべての月が同じように利益を上げるわけではないため、ドローダウンやリターンのばらつきといった安定性の確認も重要です。

リスク許容度を考慮する

リスクといえば損失をイメージしがちですが、投資の世界でのリスクとは、リターンとのバランスを意味します。

リスク許容度を考慮する際には、リターンを得るためにどれだけのリスクを取るかを慎重に判断することが重要です。

 

高リスクのEAは大きな利益を狙えますが、大きな損失を招く可能性もあります。

逆に、低リスクのEAは安定性が高いものの、リターンは控えめになることが一般的です。

資産状況や投資目標に応じて、許容リスクを設定し、それに見合うEAを選ぶことが重要です。

 

また、損失リスクを具体的に評価するためには、最大ドローダウンを確認することが重要です。

最大ドローダウンが大きいEAは急激な損失を生むリスクが高いため、慎重に検討しましょう。

資金効率を考える

EAの運用を通じて、一定期間で元本をどれくらい増やせるかは重要なポイントです。

最大ドローダウンの大きいEAは、必要な証拠金量が増えるため資金効率が悪くなります。

さらに、ポジション数が多くなるほど必要な証拠金も増加し、資金効率は低下します。

試験の信頼性を確認する

EAを選ぶ際には、試験の信頼性を確認することが不可欠です。

バックテストの結果が信頼できるかどうかは、取引回数にも依存します。

少ない取引回数では市場の変動や偶然の影響が大きく出るため、1,000回以上の取引結果が理想的です。

また、バックテストの最大ドローダウンは実際よりも小さくあらわれることがあるため、注意する必要があります。

 分散投資を考慮する

1つのEAや戦略に全ての資金を集中させることは、リスクを高めることになります。

分散投資を考慮することは、リスク管理の一環として非常に有効な手段です。

複数のEAを使うことで、異なる市場環境や相場の変動に対して柔軟に対応できます。

異なる通貨ペアや市場で運用するEAを組み合わせることで、リスクをさらに低減することが可能です。

 

たとえば、ある通貨ペアが不調でも、別の通貨ペアが好調であれば、全体としてのパフォーマンスを安定させることができます。

これは、ポートフォリオ全体のリスクを分散し、急激な損失を防ぐ効果があります。

また、異なるロジックを持つEAを組み合わせることで、特定の相場環境に強いEAと弱いEAのバランスを取り、長期的に安定した成果を得ることが期待されます。

 

分散投資により、特定のEAや市場の急激な変動による損失リスクを軽減できるため、特に大きな資産を運用する場合には不可欠な戦略といえるでしょう。

EA運用の成功には継続的な見直しが必要

EAを選んで運用を始めた後も、運用成績の定期的な見直しは欠かせません。

市場は常に変化し、過去にうまく機能していたEAが将来的にも同じように機能するとは限りません。

定期的なバックテストやリアルタイムのパフォーマンス評価を行い、EAの有効性を確認することが重要です。

 

また、EAの運用期間が長くなると、パフォーマンスが安定している場合でも、相場環境の変化や市場トレンドに対してEAがどのように対応しているかを分析する必要があります。

場合によっては、新しいEAを追加してポートフォリオを再構築することも求められるでしょう。

さらに、運用しているEAのロジックや通貨ペア、ポジションサイズを定期的に見直し、リスク管理が適切に行われているかを確認することが大切です。

 

EA選びは、多くの要素を考慮する必要がありますが、使用目的やリスク許容度、過去の運用成績、期待値などをしっかりと把握することが重要です。

さらに、分散投資を活用し、リスクを分散することで、より安定した運用が可能になります。

最終的には、EAをツールとしてうまく活用し、自身の投資スタイルに合った選択が成功のカギとなるでしょう。

 

本記事が皆様の投資判断に役立つことを願っています。

執筆者紹介

AMSER株式会社 代表取締役

林 貴晴

S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務
S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務

注意・免責事項

  • ・記載の内容は個人の見解に基づくものであり、実際の投資にあたっては、お客様ご自身の責任と判断においてお願いいたします。
  • ・本サービスの情報に基づいて行った取引のいかなる損失についても、当社は一切の責を負いかねますのでご了承ください。
  • ・また、当社は、当該情報の正確性および完全性を保証または約束するものでなく、今後、予告なしに内容を変更または廃止する場合があります。
  • ・なお、当該情報の欠落・誤謬等につきましてもその責を負いかねますのでご了承ください。
  • ・各レポートに記載の内容は、GMOインターネット株式会社の事前の同意なく、全体または一部を複製、配布を行わないようお願いいたします。

OTHERその他の記事