FXの自動売買はおすすめしない?本当のところを解説

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FXの自動売買をおすすめしないといわれる主な理由

FXの自動売買は、なぜ「おすすめしない」といわれるのでしょうか。最初に、その主な理由を5つの項目で解説します。

おすすめしない理由① 知らない間に大損をしてしまうリスクがある

自動売買は文字どおり、あらかじめ用意されたプログラムの指示に従って自動的にFX取引をします。

そのため、投資家は放置したまま運用できるわけですが、放置したままだと知らない間に損失が膨らんでしまい、気づけば大損をしていたという事例もあります。

 

裁量売買であれば常に口座の残高や損益を意識しながらトレードをするため、自動売買は「放置できること」がメリットになる一方で、リスクにもなります。

おすすめしない理由② 自動売買だからといって知識不要なわけではない

自動売買であればFXの知識がなくても始められるといった宣伝文句やネット記事などを目にすることがありますが、全く知識がない人が始められるものではありません。

 

自動的に売買されるため放置することは可能ですが、だからといって知識が不要というわけではなく、自動売買であってもFXや自動売買に関する勉強は必要です。

「自動売買=勉強不要=楽」ということはないことを知っておきましょう。

おすすめしない理由③ 長期目線で評価しないと真の実力は分からない

FXの経験がない人のなかには、自動売買には短期間で大きな利益が得られるといった派手なイメージを抱いている人が多い傾向があります。

実際に短期間で大きな利益を手にした人がいることは事実ですが、その多くは裁量売買の話です。

 

自動売買は、どちらかというとコツコツと利益を積み重ねていく運用方法です。

特にリピート系自動売買は含み損を抱えながら長期目線で少しずつ利益を積み重ねていき、ある時点で収支がプラスに転じることを目指します。そして以後もコツコツと利益を積み重ねて総利益の拡大を狙います。

 

こうした投資スタンスなので、短期目線を改められない人や、待てない人には、FXの自動売買はあまりおすすめできません。

おすすめしない理由④ 資金が少ないとロスカットのリスクが高い

少額から始められるのはFXのメリットのひとつとして知られていますが、自動売買の場合は、知らない間にロスカットになってしまうリスクを軽減するためにも資金的に余裕を持たせておく必要があります。

 

自動売買では「少額から始められる」というFXのメリットを生かしづらい部分があるため、資金が少ない人にはおすすめできません。

おすすめしない理由⑤ 投資詐欺の温床になってしまいがち

知識不要、しかも放ったらかしで利益を出せるということで、FXの自動売買には未経験者や初心者からの関心が集まりやすいでしょう。

それは裏を返すと、投資詐欺もしくは詐欺まがいの怪しげな儲け話の温床になりやすいことを意味しています。

 

しかも「AIが自動的に売買」といったように注目度の高いキーワードをうまく使って構築された儲け話もあります。

 

FXの自動売買を勧める広告や記事、動画などで「完全放ったらかしでOK」「放置しているだけで爆益」といった宣伝文句が躍っているものは特に注意が必要です。

 

このように怪しげな話の温床になりやすいことを踏まえると、初心者が何も知らないまま安易に始めることはおすすめできません。

FXの自動売買って実際はどうなの?
3年間やってみた結果と評価

筆者は約3年間FXの自動売買を運用しており、現在も運用中です。FXの自動売買にはリピート系とロジック系と呼ばれるカテゴリーがありますが、筆者はその両方を運用しています。

 

その経験から得られた気づきや、大まかな運用成績などをお伝えしたいと思います。

 

その前に、リピート系とロジック系の自動売買について両者の概要を簡単に解説しておきたいと思います。

 

自動売買の種類
概要
リピート系一定の間隔で並べるようにIFD注文を置き、レートが変動することでポジションの成立と利益確定を狙います。
為替相場は長期的にレンジを形成する傾向があるため、その特性を利用してエントリーと利益確定を繰り返します。
ロジック系テクニカルインジケーターやチャート形状など、テクニカル分析を行うプログラムが特定の条件が成立した際に注文を出し、利益確定を狙います。

リピート系の年利は10%台

リピート系自動売買は多くのFX会社がサービスを提供していますが、筆者はそのなかでもパイオニア的な存在であるマネースクエア社の「トラリピ」を利用しています。

運用している通貨ペアはカナダドル円、NZドル円、NZドル米ドル、ユーロポンド、豪ドルNZドルなどです。

 

このうちユーロ円の売りトラリピは歴史的な円安局面で含み損が拡大したため、損切りをして撤退しました。

 

こうしたさまざまな局面を乗り越えて、3年間の平均利回りは年利10%台です。

歴史的な円安という特殊な相場環境のなかで10%台の利回りを確保できているので、こうした特殊な相場環境でなければもっと高い利回りが得られていたと思います。

 

なお、同様のリピート系自動売買をMT4のEAでも運用しています。

ほぼ同じ金額で通貨ペアや自動売買の設定もほぼ同じです。若干MT4運用のほうがスプレッドが狭いため約定率が高く、利回りもその分高くなっていますが、それでも3年間の平均利回りは10%台です。

 

リピート系自動売買は「月利1%が理想」とされているので、ほぼその理想どおりの運用ができていると思います。

ロジック系の年利はEAによってまちまち

ロジック系の自動売買は、いずれもMT4に自動売買のためのEAを組み込んで運用しています。

最も好成績のEAは年利30%程度となっており、かなり優秀です。その一方で年利4%程度のEAもあります。

 

運用しているEAのなかでトータルの収支がマイナスになっているものはないため、EA選びを間違えなければロジック系自動売買でもしっかり利益は出ると考えてよいでしょう。

自動売買は「完全」自動売買ではない

実際に自動売買を運用していてよく思うのは、自動売買だからといって完全に自動ではないことです。

 

リピート系自動売買は性質上、常に含み損を抱えることになります。そのため、含み損が大きくなりすぎるとロスカットの危険が高まります。

逆行が進んで含み損が拡大している局面では一部ポジションの損切りや追加入金などの対応をとって、常に証拠金維持率が500%を下回らないことを目安にメンテナンスをしています。

 

ロジック系は長期的にポジションを持つことが少ないため、連敗しない限りは資金の枯渇を気にする必要はないでしょう。

 

しかし、EAによっては相場の急変に対応できないことがあります。

ドル円で運用するスキャルピング系のEAでは相場の急変で誤ったエントリーをしてしまうことがあるため、米国CPIや雇用統計の発表といったインパクトの強い経済指標が発表される日は自動売買を止めるなどの対応をとっています。

設定やEAを間違えなければFXの自動売買は成功できる

3年間(トラリピは5年間)にわたってFXの自動売買を運用してきた結果、言えることをまとめると、以下のとおりです。

  • 設定やEAを間違えなければFXの自動売買は成功できる
  • 自動売買だからといって完全自動ではなく、状況に応じて要メンテナンス
  • 派手な印象のあるFXだが、自動売買はコツコツ型の運用になる
  • 今のところ収支はプラスなので、今後も運用を続けていきたい

FXの自動売買で成功するための3大鉄則

FXの自動売買を実際にやってきた経験から、成功するために必要な3つの鉄則を導き出しました。この3つを意識するだけで、自動売買がより成功しやすくなると思います。

長期目線を持ち、一喜一憂しない

自動売買で重要なのは、長期目線です。FXはデイトレードやスキャルピングなど短期売買との相性がいいと思われがちですが、自動売買では長期目線が求められます。

 

リピート系自動売買では常に含み損を抱えるため、口座画面にはマイナス記号や赤い数字が表示されますし、ロジック系自動売買には最大ドローダウンといって「これまでの運用で最も残高が減った金額」を示す指標があります。

 

つまり、自動売買には一時的な含み損やマイナス収支は付き物だということです。

こうした短期的な動向に一喜一憂せず、長期目線でプラス収支を目指すのがFXの自動売買です。

 

このメンタルをコントロールできない人にとっては精神衛生上よくない局面もあるので、自動売買向きではないかもしれません。

バックテストとフォワードテストを入念にチェックする

ロジック系自動売買の実力を知るための指標としてプロフィットファクター(PF)はよく知られていますが、こうしたEA販売・配布時に公開されている情報だけでなく、バックテストやフォワードテストの結果もしっかりチェックすることが重要です。

 

MT4やMT5では自分でバックテストをすることができるので、しっかり過去の成績をチェックしましょう。

 

また、EAの販売・配布サイトではフォワードテスト情報も公開されています。リリースされてからの運用成績がどうなのかもしっかりチェックしてから、運用するEAを選びましょう。

リピート系では近隣国通貨のペアを狙う

リピート系自動売買はレンジ相場に強い自動売買です。

そのため、トレンドが発生して一方向の値動きが発生すると、設定によっては含み損が拡大して運用成績を悪化させます。

 

2022年頃からの円安ドル高によって発生したトレンドでは、リピート系自動売買を運用している投資家のなかから撤退する人が続出しました。

 

こうした事情を踏まえて、筆者はリピート系自動売買の主軸を「近隣国通貨ペア」に絞っています。具体的には、豪ドルNZドル、ドルカナダ、ユーロポンドなどです。

 

これらの通貨ペアはいずれも近隣国通貨同士なので似た動きをすることが多く、そんな通貨同士のペアはレンジ相場になりやすい傾向があります。

 

そのため、リピート系自動売買の長期的な運用に適しているといえます。

執筆者紹介

ライター

田中翼

投資専門ライター&編集者集団、株式会社tclのライター FX歴は15年で、自動売買はEA、トラリピを運用中。また、ETFやREITへの投資も行っている。
投資専門ライター&編集者集団、株式会社tclのライター FX歴は15年で、自動売買はEA、トラリピを運用中。また、ETFやREITへの投資も行っている。

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